抄録
肺腫瘤に対する生検,マーキング,あるいはセンチネルリンパ節同定などの目的で肺穿刺を行う機会が増加しつつある.今回われわれはCTガイド下マーキングによる脳空気塞栓症と思われた1例を経験したので報告する.症例は77歳,男性.右S6に15mm大のスリガラス陰影を認め,胸腔鏡下生検の予定であった.肺内病変であったため手術直前にVATSマーカーを用いたCTガイド下肺穿刺を行った.腹臥位とし胸膜より約3cmの深さにマーカー留置した.咳嗽,血痰を認めなかったが移動時にふらつきを認めた.直ちに頭低位としCTを撮影したところ左室,肺動脈内にair像を認めた.意識状態に変化を認めず,頭低位として酸素投与を行い直ちに症状は軽快した.肺穿刺を行う際は常に空気塞栓の可能性を念頭におく必要がある.