抄録
症例は16歳女性.学校健診で胸部X線異常影を指摘された.CT,MRIにて右後縦隔腫瘍を指摘され当科へ紹介された.術前の理学的所見で異常はなく無症状であった.画像所見から神経原性の後縦隔腫瘍と診断し,手術を行った.手術開始直後から収縮期血圧が200mmHg以上まで上昇し,降圧薬に反応不良であったが,腫瘍摘出後速やかに血圧は安定した.術後病理組織検査ではparagangliomaと診断された.後縦隔原発のparagangliomaは稀で,本邦では26例が報告されているが,手術時に大量出血と異常高血圧を起こす危険があり,術前の鑑別診断が重要と考えられた.