抄録
子宮内膜症に合併した血胸の症例を経験したので報告する.症例は45歳女性.右下腹部痛にて当院を受診した.月経開始後5日目であった.腹部CTにて多量の腹水と子宮右側に造影される腫瘤を認めた.受診後貧血の進行を認め,右卵巣出血の疑いで開腹手術を行った.骨盤内には子宮内膜症を認め,腹腔内には約1500mlの血液貯留を認めた.両側卵巣卵管摘出術を行った.術後の胸部X線写真で右肺野の透過性不良を認め胸水貯留と診断した.胸腔ドレーンを挿入し,約1300mlの血性胸水を排液した.翌日,血胸の原因の診断目的で胸腔鏡下手術を行った.臓側および壁側胸膜と横隔膜に多数の茶色の点状班を認めた.また横隔膜の腱中心に紫色の斑点と複数の小孔を認めた.横隔膜と右肺下葉を部分切除した.横隔膜の組織所見にて異所性子宮内膜症と診断した.