日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
Print ISSN : 0919-0945
ISSN-L : 0919-0945
症例
慢性膿胸掻爬術後遠隔期に発症した血管肉腫の一例
大瀬 尚子松村 晃秀阪口 全宏北原 直人伊藤 則正北市 正則
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 23 巻 2 号 p. 199-202

詳細
抄録

症例は89歳男性.31歳時に肺結核に対する人工気胸治療歴がある.79歳時に右側の慢性膿胸に対し,膿胸腔掻爬術を施行し,以後再発なく経過していた.89歳時に右背部に有痛性の膨隆が出現した.胸部CTでは右胸壁に4×5cm大の腫瘤を認め,第8肋骨の融解像を認めた.生検では悪性線維性組織球腫が疑われた.生検部位の創部から出血が持続したため2007年1月,摘出術を施行した.腫瘍は第8肋骨を中心に第7,9肋骨まで浸潤していたが,臓側胸膜,肺への浸潤はなく摘出し得た.切除検体で胸壁原発血管肉腫と診断した.術後1年で,再発を認めていない.慢性膿胸の経過中に発生する悪性腫瘍では,悪性リンパ腫が多いが,血管肉腫も慢性膿胸の経過中に発生した報告が多い.本症例は慢性膿胸に対する掻爬手術後に発生した稀な例で,かつ外科的に切除し得た胸壁腫瘍で本邦最高齢の症例であった.

著者関連情報
© 2009 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top