目的：アスベスト関連肺癌（以下，石綿肺癌）およびじん肺肺癌について検討した．対象と方法：1998～2008年の期間に当院で診断・治療した症例について検討した．比較対照は，同時期の石綿肺癌，じん肺肺癌を除いた肺癌（以下，その他肺癌）とした．結果：石綿肺癌は98例，じん肺肺癌は28例，その他肺癌は491例であった．石綿肺癌とじん肺肺癌の臨床病理学的比較において，組織型と臨床病期に有意差を認めた．手術症例の検討では，じん肺肺癌は，肺葉切除が少なく，予後も不良であった．石綿肺癌，じん肺肺癌およびその他の肺癌の予後は，生存期間中央値は20.4ヵ月，16.2ヵ月および19.2ヵ月で有意差は認めなかった．全症例を対象とした多変量解析では，石綿ばく露歴およびじん肺の合併は予後因子でなかった．結論：石綿肺癌およびじん肺肺癌は一般的な肺癌と同等に予後不良であると考えられた．
