2009 年 23 巻 5 号 p. 752-756
肺癌術後の荒蕪肺にアスペルギルス症を,膿胸腔にはMethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)と緑膿菌を感染した有瘻性膿胸に対し開窓術後に広範な胸壁合併切除を伴う胸郭形成と胸膜残肺全摘,大網充填術を行い,さらに術後の胸郭動揺を防止する目的で遊離の大腿筋膜弁(大腿筋膜張筋+腸径靭帯)を胸壁に固定し治癒できた症例を経験したので報告する.有瘻性膿胸の治療において重要なことは膿胸腔の浄化と遺残腔をできるだけ残さないことである.さらに荒蕪肺は感染の温床になるため心肺機能が許せば切除すべきと考える.そして栄養管理を含めた全身状態の改善を図りつつ,根治術の時期を逃さないことである.広範な胸壁切除は整容性の問題はあるが,視野が良好で手術時間や出血量が抑えられ術後の死腔を完全に消失することができる.また術後の胸郭動揺を防止するために大腿筋膜弁による固定術を追加するという方法は今回検索した範囲では報告がなく新しい知見と思われた.