日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
腋窩動脈損傷を伴う胸腔内貫通刺創(杙創)の1例
植田 真三久岡村 雅雄富原 英生村田 晃一谷村 信宏岩永 幸一郎
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キーワード: 外傷後膿胸, 木片異物, 杙創
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2010 年 24 巻 5 号 p. 854-858

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抄録

症例は37歳男性,泥酔状態で2週間前に自転車から転倒し右上腕挫創を受傷した.近医にて縫合処置を受けたが抜糸時に創出血を認めたため当院紹介となった.来院時の理学所見にて右呼吸音が消失しており,胸部CTにて右胸腔内全体に液体貯留を認めた.肋骨骨折と肺挫傷による血胸の診断で入院となり,胸腔ドレナージを行ったが,肺膨張が得られないため手術となった.麻酔導入時に右上腕創部より拍出性の出血を認め,圧迫止血の後に右開胸にて手術を開始した.胸腔内には感染性の血腫が充満しており,肺尖背側には上腕創部より貫通した木の枝を認めた.出血点は右腋窩動脈で異物の貫通刺創(杙創)による動脈損傷と膿胸と診断した.術式は血腫除去,胼胝切除,洗浄肺剥皮術,動脈損傷部縫合閉鎖となった.術後に有瘻性膿胸が遷延し,2度の手術と気管支鏡下肺瘻閉鎖術を必要としたが救命でき現在は社会復帰を果たしている.

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