抄録
フィブリン糊(FG)を用いた化学的胸膜癒着効果,臓側胸膜の変化をラットで検討した.胸膜癒着モデルは,FGに加え,OK432,プラチナナノコロイド,ポリグリコール酸ポリマーを胸腔内に用いた.FGによるOK432の徐放効果モデルも作製した.胸膜癒着モデルの再開胸時,FG+OK432,FG+プラチナナノコロイドでは,胸腔内に癒着は認めなかった.FGによるOK432の徐放効果は,OK432単独投与による胸膜直下の炎症性細胞浸潤は1週間がピークになるのに対し,FG+OK432では2週間目と遅延していた.FGの吸収に伴い,OK432が徐々に臓側胸膜に供給されるため,胸膜面を緩徐に刺激し肥厚させ,胸壁との癒着に関しては,抑制的に働くことが示唆された.外科治療の困難な難治性気胸に対するFGを加えた化学的胸膜癒着術は,徐放効果によって,癒着作用よりも臓側胸膜面を肥厚させることで,気胸再発の防止に関与すると考えられた.