2012 年 26 巻 6 号 p. 620-624
症例は71歳,男性.検診にて左肺上葉に胸部異常陰影を指摘され,肺腺癌(cT1bN0M0 stageIA)と診断された.手術拒否のため,重粒子線治療(52.8 GyE/4fr)が施行され,画像上,陰影は不変(SD)であった.約9ヵ月後,原発巣の周囲に多発の浸潤影を認め,以降,経過観察するも増大傾向にあった.さらに経過観察中,原発巣も増大傾向を認め,重粒子線治療の約2年後,当科紹介となった.気管支鏡検査を施行し,原発巣より腺癌細胞を認めたため,局所再発と診断した.さらに原発巣周囲の陰影は肺内転移と臨床診断した.直ちにサルベージ手術(左肺上葉切除術)を行った.術後経過は良好で,術後14日目に退院となった.病理組織学的検査にて,原発巣は腺癌の再発が確認され,さらに周囲の病変は肺内転移と診断した.術後約1年の現在,再発を認めていない.