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生田 安司, 田村 和貴, 木下 義晃, 日高 孝子, 古賀 孝臣
2012 年 26 巻 6 号 p.
597-601
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
フリー
症例は48歳,女性.腹痛と悪寒にて近医を受診し,左胸水と腹腔内腫瘤を指摘され,精査目的にて当院紹介受診となった.胸腹部CTにて両肺のびまん性薄壁嚢胞像と左胸水,および腹腔内リンパ節の腫大を認めた.胸腔穿刺にて乳糜胸水を認め,リンパ脈管筋腫症に伴う乳糜胸が疑われた.乳糜胸は保存的治療が無効であったため,手術を施行した.術前にオリーブオイルを混入した牛乳を服用させ,乳糜漏出部の縫合閉鎖と肺生検,およびタルクによる胸膜癒着術を施行した.乳糜流出は手術直後より消失した.切除標本の病理組織学検索にてリンパ脈管筋腫症と診断された.本疾患による乳糜胸が生じ手術を考慮する場合,安易に右胸腔より横隔膜直上で胸管本管を結紮するのではなく,乳糜貯留側からのアプローチを試みるべきであると思われた.
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日野 佑美, 梶 政洋, 宮原 尚文, 小林 零, 末舛 恵一
2012 年 26 巻 6 号 p.
602-608
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
フリー
症例は38歳,女性.突然の左胸背部痛を自覚し当院を受診,精査の末前縦隔奇形腫の胸腔内穿孔と診断し,後日腫瘍摘出術を行った.病理学的検査所見では大半は膵組織を始めとした多彩な組織像を伴う奇形腫の所見であったが,神経組織の一部に未熟成分を伴う未熟奇形腫の診断となった.術前高値を示した血中CA19-9値は術後正常化した.腫瘍マーカー上昇の機序として,CA19-9産生能を有する膵組織から分泌された膵酵素が腫瘍融解を来たし,そのため腫瘍が胸腔内に穿孔し,胸腔内に漏出した腫瘍の内容液が胸膜経由で吸収され血中腫瘍マーカー上昇に至ったと考えられた.
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石橋 直也, 佐藤 伸之, 岡田 克典, 近藤 丘
2012 年 26 巻 6 号 p.
609-614
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
フリー
ステロイドが著効した線維性縦隔炎を2例経験した.1例目は52歳男性,嗄声を主訴に近医を経て当科を受診し,CTで左縦隔に腫瘤を認めた.2例目は72歳女性で,呼吸困難感と血尿を主訴に当院泌尿器科を受診し,CTで左胸水と後縦隔から後腹膜にかけて腫瘤を認めた.いずれの症例も画像所見で胸腔内に活動性を有する腫瘤が疑われるものの確定診断には至らず,開胸生検を行ったところ,線維性縦隔炎と診断され,術後ステロイド(副腎皮質ホルモン)投与により腫瘤は著明に縮小した.ステロイドは線維性縦隔炎治療の選択肢の1つとして考慮されるべきである.
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生田 安司, 下山 孝一郎, 田村 和貴, 赤嶺 晋治, 近藤 能行, 卜部 省悟
2012 年 26 巻 6 号 p.
615-619
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
フリー
症例は39歳,男性.検診胸部X線上,左肺門部に異常陰影を指摘された.胸部CTでは左肺門部に5 cm大の境界明瞭な腫瘤影を認め,中心部に石灰化を伴い均一な造影効果を有していた.悪性リンパ腫,間葉系腫瘍,肺癌,過誤腫などを疑い,診断および治療目的にて腫瘤を含む左肺上葉切除術を施行した.病理組織学的検査でヒアリン血管型Castleman病と診断された.Castleman病は稀なリンパ増殖性疾患で,全身のリンパ組織に発生しうるが,胸腔内,特に縦隔や肺門部に好発する.今回,我々は肺門部に発生したCastleman病の一例を経験したので報告する.
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徳永 俊照, 東山 聖彦, 藤原 綾子, 狩野 孝, 岡見 次郎, 児玉 憲
2012 年 26 巻 6 号 p.
620-624
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
フリー
症例は71歳,男性.検診にて左肺上葉に胸部異常陰影を指摘され,肺腺癌(cT1bN0M0 stageIA)と診断された.手術拒否のため,重粒子線治療(52.8 GyE/4fr)が施行され,画像上,陰影は不変(SD)であった.約9ヵ月後,原発巣の周囲に多発の浸潤影を認め,以降,経過観察するも増大傾向にあった.さらに経過観察中,原発巣も増大傾向を認め,重粒子線治療の約2年後,当科紹介となった.気管支鏡検査を施行し,原発巣より腺癌細胞を認めたため,局所再発と診断した.さらに原発巣周囲の陰影は肺内転移と臨床診断した.直ちにサルベージ手術(左肺上葉切除術)を行った.術後経過は良好で,術後14日目に退院となった.病理組織学的検査にて,原発巣は腺癌の再発が確認され,さらに周囲の病変は肺内転移と診断した.術後約1年の現在,再発を認めていない.
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武市 悠, 山田 俊介, 須賀 淳, 中川 知己, 増田 良太, 岩崎 正之
2012 年 26 巻 6 号 p.
625-628
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
フリー
症例は32歳,男性.健診胸部X線写真で異常影を指摘され,当院紹介となった.胸部CTで,左S6に径3.7 cmの腫瘤影を認めた.気管支鏡で確定診断は得られなかったが,PET検査で同部位に集積を認めたため,肺悪性病変を疑った.手術は胸腔鏡下に行い,迅速病理診断で悪性筋原性腫瘍が疑われたため,左下葉切除術を施行した.身体的所見およびPET検査などで,四肢・体幹を含め他に原発病巣は認めず,肺原発肺肉腫(線維肉腫)と診断した.肺原発肺肉腫は極めて稀な疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
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高崎 千尋, 石橋 洋則, 藤原 直之, 明石 巧, 大久保 憲一
2012 年 26 巻 6 号 p.
629-632
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
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46歳男性.検診で胸部異常影を指摘され当院紹介された.胸部CTとMRIで前縦隔に82×35×80 mm大の辺縁不整な腫瘍を認め,腫瘍摘出の方針となった.手術待機中に,発熱,胸痛と息切れがあり,14日後に当科を受診した.胸部単純X線写真と胸部CTで左胸水を少量認めた.腫瘍は初診時と比較して軽度に腫大していた.MRIおよび血液検査所見などから,手術待機中に腫瘍内出血をきたした胸腺腫を疑って手術を施行した.胸腔鏡下に腫瘍生検を行い,迅速診断にて胸腺腫であることを確認した.さらに胸膜炎の所見とともに少量の胸水を認めた.胸骨正中切開にて,胸腺胸腺腫摘出術,心膜合併切除を行った.病理ではTypeB2の胸腺腫で,腫瘍内に広範な出血壊死を伴っていた.胸痛などの自覚症状や胸水貯留を伴う胸腺腫は稀であり,文献的考察を踏まえて報告する.
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鈴木 仁之, 真栄城 亮, 井上 健太郎, 近藤 智昭, 高尾 仁二, 島本 亮
2012 年 26 巻 6 号 p.
633-637
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
フリー
症例は54歳男性.検診にて胸部異常陰影を指摘されたため当院紹介となった.精査により右腕頭静脈への浸潤が疑われる縦隔腫瘍と診断し,手術を施行した.腫瘍は横隔神経を巻き込み右腕頭静脈と強く癒着していたため横隔神経は離断し,右腕頭静脈を含めて腫瘍を摘出した.病理組織学的検査では,血管内皮類似の異型細胞が血管腔を形成しCD34, von Willebrand factor(vWF)陽性,TTF-1, αSMA, S100, desminおよびcytokeratin陰性であることから類上皮血管内皮腫と診断した.本腫瘍の縦隔発生例の報告は,自験例を含めて39例と非常に稀であるため報告する.
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三澤 賢治, 三島 修, 高橋 祐輔, 西 智史, 北野 司久
2012 年 26 巻 6 号 p.
638-641
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
フリー
48歳,男性.2010年9月の胸部CT検診にて異常を指摘され,前医を受診した.CTにて右S
10に15 mm大のpure GGOを認め,肺癌の疑いにて当院紹介となった.10ヵ月の経過観察にて病変は消失せず,2011年10月胸腔鏡下右S
10区域切除を施行した.術前に作成したCT angiography(CTA)およびCT bronchography(CTB)に,肺野条件CT(LCT)を融合することで,手術展開に近似した術前画像をえることが出来た.この3-D画像を参考にすることで円滑な手術操作に有用であったと考えた.
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西川 敏雄, 石井 泰則, 木村 幸男, 森 雅信, 上川 康明, 井上 文之
2012 年 26 巻 6 号 p.
642-646
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
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症例は36歳,女性.2009年1月検診での胸部異常陰影にて当院初診となった.CT上,右中葉に境界明瞭な腫瘤を認め,PET-CT検査ではSUV 5.71とFDGの高集積を認めた.気管支鏡検査では右B
5内腔に腫瘤を認めたが生検および洗浄細胞診では確定診断には至らなかった.悪性腫瘍を疑い手術を勧めたが,同意が得られず経過観察となった.同年10月になり手術に同意されたため施行したところ腫瘤は中葉支根部に存在し下葉への浸潤も疑われたため中下葉切除およびリンパ節郭清を施行した.腫瘤は2.5×1.7 cmでB
4, B
5間に存在し,気管支腺由来で一部ポリープ状に気管支内腔に突出していた.組織学的には上皮成分と非上皮成分が混在し,上皮成分は管状腺管の形成や嚢胞形成,また非上皮成分は紡錘形あるいは星芒状の細胞が疎に増殖し粘液状を呈するといった多彩な像を呈しており,多形腺腫との診断であった.以後再発や異常は認めず現在も経過観察中である.
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長阪 智, 伊藤 秀幸, 清家 彩子, 木村 尚子, 喜納 五月, 桑田 裕美
2012 年 26 巻 6 号 p.
647-653
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
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体幹部定位放射線治療後のサルベージ手術4例につき検討した.3例は肺葉切除術を,1例は楔状切除術を施行した.体幹部定位放射線治療の影響と思われる胸壁との癒着は2例で全く認めず,2例は軽度癒着を認めた.手術は通常と変わらず遂行でき,術後経過も良好であった.今後,原発性肺癌・転移性肺癌に対する体幹部定位放射線治療が増えると予想される.これに伴い,局所再発症例に遭遇する機会も増すと思われる.このような症例に対するサルベージ手術は安全かつ有用と考える.
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齋藤 志子, 安藤 耕平, 前原 孝光, 益田 宗孝
2012 年 26 巻 6 号 p.
654-657
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
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患者は実業団ラグビー部に所属する28歳男性.練習中に右胸背部を打撲した.来院時,胸部X線写真,胸部CTで多量の液体貯留を認め,胸腔ドレナージを施行した.下肺野の透過性低下は軽度改善したものの,胸膜外とおもわれる部位の液体貯留陰影は増大傾向を認めたことから,内胸動静脈付近からの出血による胸膜外血腫を疑い,緊急血腫除去・止血術を施行した.手術は胸腔鏡下に行い,胸腔内の血腫を除去した後,内胸動静脈付近からの出血を止血し終了した.術後経過は良好であり,術後4日目に退院となった.
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梶浦 耕一郎, 先山 正二, 鳥羽 博明, 川上 行奎, 監崎 孝一郎, 近藤 和也
2012 年 26 巻 6 号 p.
658-662
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
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巨大縦隔腫瘍は時として全身麻酔の際に致命的な呼吸循環不全に陥ることがある.今回我々は巨大縦隔成熟奇形腫に対して経皮的人工心肺補助(以下PCPS)併用下に手術を行った症例を経験したので報告する.症例は20歳,女性.検診発見の巨大縦隔腫瘍にて当院紹介された.CTで10×9 cm大の前縦隔腫瘍を認めた.嚢胞成分が主体で多房化しており,石灰化や脂肪成分も混在していた.気管は分岐部付近で前後径5 mmと狭窄し,腹部にも巨大な嚢胞性病変があり,両側大腿静脈が圧排狭窄していた.全身麻酔時に気道閉塞をおこし,呼吸不全となることが予測された.両側大腿静脈が狭窄しており,緊急時のPCPS装着に手間取る可能性もあったので,麻酔導入前からPCPSを回しつつ,全身麻酔を導入した.手術は最初に小開胸し,腫瘍の嚢胞部分を穿刺吸引してから胸骨正中切開にて腫瘍摘出した.病理組織学的所見では成熟奇形腫であった.
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江間 俊哉, 川野 亮二
2012 年 26 巻 6 号 p.
663-667
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
フリー
症例は65歳女性,2011年某日午後,自殺企図により,自宅で前胸部を包丁で刺した状態で発見され,救急搬送された.病着時,意識は清明であり,宗教上の理由により輸血を拒否した.生命に関わることを十分にインフォームドコンセントし,輸血をしないことを条件に緊急手術を行った.刃先の走行が幸いし,開胸,右肺下葉切除を施行することで,手術前からの全出血量700 mlで無輸血により手術を終えることができた.以後の経過も良好であり,貧血の改善を待って14 PODで退院した.現在外来通院中である.
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生田 安司, 田村 和貴, 橋本 佳子, 生野 久美子, 安永 由紀恵
2012 年 26 巻 6 号 p.
668-672
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
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乳児肺葉内肺分画症(ILS)の1手術例を経験したので報告する.症例は4ヵ月,女児.咳嗽と発熱を主訴に当院紹介受診となった.胸部単純X線で左下肺野に浸潤影を認め,肺炎と診断された.肺炎は難治性で,肺分画症が疑われた.胸部造影CTで下行大動脈の第10胸椎の高さから分岐する径5 mmの異常動脈を認めた.その動脈は左下葉に流入したのち2本の異常静脈と連絡し,下肺静脈へと還流しており,ILSと診断された.生後7ヵ月目に,左肺下葉切除術を施行した.切除標本の病理組織学検査からも肺葉内肺分画症と診断された.新生児乳児ILSの手術時期は,呼吸障害を認める場合は可及的早期に手術をおこない,呼吸障害を認めない場合は,術後合併症や術前感染のリスク,健常肺の発育などを考慮し,乳児期の手術が勧められる.手術法は病変部を含めた肺葉切除が適当と思われる.
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足立 洋心, 荒木 邦夫, 目次 裕之, 徳島 武
2012 年 26 巻 6 号 p.
673-676
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
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症例は78歳の男性.60歳より間質性肺炎があり,当院に通院中であった.2011年2月のCTではわずかに淡い陰影を認めたが,11月のCTにて右肺S7に10×6 mmの結節陰影を認めた.よって肺癌を疑い,胸腔鏡下肺部分切除を施行した.術中迅速診断にて悪性所見なく,永久標本にて肺過誤腫の診断であった.肺過誤腫の増大速度は比較的緩やかと言われている.今回のように急速に増大することは稀である.肺過誤腫も場合により増大が速いこともあり,鑑別が必要である.
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石本 真一郎, 村松 高, 四万村 三恵, 古市 基彦, 大森 一光, 塩野 元美
2012 年 26 巻 6 号 p.
677-682
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
フリー
症例は41歳,女性.15年前に右胸壁腫瘍の診断で,胸壁腫瘍摘出術を施行され,さらに13年前には右胸壁腫瘍の再発と両側転移性肺腫瘍に対しそれぞれ切除術を施行されていた.これらの病理組織診断は当初すべてmesotheliomaであった.その後,半年に1回程度外来通院し経過をみていたが明らかな再発,転移を認めなかった.初回手術から15年目に胸痛が出現し当院を受診.右胸壁腫瘍の再発と診断し,腫瘍摘出術を施行した.摘出標本の病理組織および遺伝子検索でSYT/SSX1融合遺伝子を検出し,滑膜肉腫と診断した.過去の検体についても同じく遺伝子検査を施行したところ,全てにSYT/SSX1融合遺伝子を検出した.キメラ遺伝子が診断に有用であった1例を経験した.
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伊藤 祥隆, 小林 弘明, 滝沢 昌也, 高橋 充, 関野 陽一
2012 年 26 巻 6 号 p.
683-687
発行日: 2012/09/15
公開日: 2012/10/16
ジャーナル
フリー
ロッキングプレートは骨のみならずスクリュウとも固定する新しい骨整復用の器材である.症例は37歳,女性.交通事故にて受傷し当院へ救急搬送された.前胸部右側に高度の奇異呼吸を認め,自発呼吸は不可能であった.胸部CTにて胸骨体部に横断骨折と高度な転位を,右第III~X肋骨と左第II, III肋骨に骨折と右側の血気胸を認めた.高度転位を伴う胸骨骨折,両側多発肋骨骨折,および右外傷性血気胸と診断した.胸骨および多発肋骨骨折による高度のflail chestに対して緊急手術を行った.前胸部正中皮膚切開により胸骨に達し,体部の横断骨折部で前後に転位した胸骨をワイヤ2本を用いて整復した後にロッキングプレートで固定した.また右第III, IV肋骨骨折部と左第II肋軟骨骨折部は非吸収糸にて縫合固定した.人工呼吸器での内固定を5日間行った後,バストバンドでの外固定とした.flail chestを合併する胸骨骨折高度転位症例ではロッキングプレートでの固定が有効と考えた.
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