2012 年 26 巻 6 号 p. 663-667
症例は65歳女性,2011年某日午後,自殺企図により,自宅で前胸部を包丁で刺した状態で発見され,救急搬送された.病着時,意識は清明であり,宗教上の理由により輸血を拒否した.生命に関わることを十分にインフォームドコンセントし,輸血をしないことを条件に緊急手術を行った.刃先の走行が幸いし,開胸,右肺下葉切除を施行することで,手術前からの全出血量700 mlで無輸血により手術を終えることができた.以後の経過も良好であり,貧血の改善を待って14 PODで退院した.現在外来通院中である.