2013 年 27 巻 4 号 p. 505-510
81歳男性.検診の胸部単純X線写真にて胸部異常影を指摘され当科紹介となった.胸部CTで前縦隔に5 cm大の腫瘤を認め,一部に嚢胞性変化を疑わせる所見を認めた.しかし,胸部MRIにおいてT1WIで高信号,T2WIで低信号領域を認め,腫瘍性病変の存在も疑われたため手術の方針とした.左胸腔アプローチの完全鏡視下前縦隔腫瘤摘出および胸腺部分切除術を施行した.病理検査では血性成分や壊死物質を内容物とする多房性胸腺嚢胞と一部にA型胸腺腫の合併を認めた.術前画像診断では病変全体が腫瘍性病変である可能性も考慮し手術を施行したが,実際には腫瘍性病変は一部であり,病変の大半が嚢胞性病変であった.