抄録
症例は42歳,男性で,健康診断の胸部単純X線写真にて気管の右方への偏位を認めたため,精査加療を目的に来院した.術前のCT検査で気管左側に2.8 cmの低濃度結節を認め,超音波検査では甲状腺嚢胞などの嚢胞性疾患が疑われた.気管圧排所見があり今後の病変拡大の懸念もあるため,診断および治療の目的に手術を施行した.頸部左半襟状切開にて嚢胞摘出術を施行し,病理組織学的に嚢胞壁に線毛円柱上皮,粘液腺,平滑筋を認めたため,気管支原性嚢胞と診断した.術後は一過性の左反回神経麻痺をきたしたが,退院半年後には麻痺は消失し,再発は認めない.2012年12月までの期間で医学中央雑誌にて検索しえた範囲では,頸部に発生した気管支原性嚢胞は47例報告されており,その内で小児および皮膚発生症例を除く26例と自験例を合わせて検討を行った.