抄録
症例は65歳男性.血痰を主訴に近医を受診した.胸部CT写真で右肺上葉に異常影を指摘され,気管支鏡検査が行われたが確定診断に至らず,当科紹介となった.CT再検で,右肺上葉の結節はわずかに縮小したため経過観察としたが,1年後陰影は残存していた.肺癌の可能性が否定できなかったため,診断治療目的に手術を行った.病巣は1.7 cm大で右肺上葉の肺門近くに存在し,部分切除での診断は困難であったため,右肺上葉切除術を施行した.悪性所見は認めず,細菌培養ではScedosporium apiospermumを検出し,スケドスポリウムによる肺真菌症と診断した.術後療法として2ヵ月間ボリコナゾールを内服し,術後18ヵ月現在再発は認めず,外来経過観察中である.Scedosporium apiospermumによる稀な肺感染症の1例を経験したので,報告する.