2015 年 29 巻 6 号 p. 713-717
比較的まれな縦隔内異所性副甲状腺腺腫の1手術例を経験したので報告する.症例は70歳男性.自治体検診で胸部異常陰影を指摘され当科を紹介受診した.胸部CTで前縦隔に直径25 mmで充実性成分と嚢胞性成分が混在し,充実性成分に造影効果を有する腫瘍を認めた.FDG-PETの集積はSUVmax 5.17/5.50であった.胸腺腫と術前診断し,左胸腔鏡下縦隔腫瘍摘除術を施行した.術中所見では腫瘍周囲血管の増生を伴う浸潤傾向のない境界明瞭な赤褐色調の腫瘍で,肉眼的に完全切除できた.術後経過は問題なく退院した.異所性副甲状腺腺腫の病理診断であったため,周術期の血液検体を用いて後方視的に副甲状腺機能を測定したが,intact PTH, Ca, Pの値は手術前後で変動を認めず非機能性腫瘍と診断した.