2015 年 29 巻 7 号 p. 808-812
症例は65歳女性.CT検査にて胸部異常陰影を指摘され受診となった.既往歴に心房細動や凝固能異常等は認めなかった.CT検査では左肺S3にground glass opacity(GGO)を認め,T1aN0M0 stage IAの肺癌との術前診断にて手術を施行した.迅速病理検査にて腺癌との診断であり左上葉切除及びリンパ節郭清を施行した.術後4日目に右前腕のしびれと冷感を自覚,造影CT検査にて右腋窩動脈閉塞症と診断し緊急血栓除去術を施行した.その後抗凝固療法を施行,血栓除去術より16日目に退院となった.本症例は造影CT検査及び心臓超音波検査では左房及び左上肺静脈切離断端には血栓を疑う陰影は認めなかったものの,左上肺静脈切離断端に形成された血栓による急性動脈塞栓症の可能性が考えられる.肺に対する手術後には血栓形成及びこれによる動脈閉塞発症の可能性を念頭におくことが重要であると考えられた.