2016 年 30 巻 1 号 p. 52-56
症例は54歳,女性.胸部異常影を指摘され,精査加療目的に紹介となった.胸部CTでは前縦隔右側で心膜に接する最大径54 mm大の腫瘤を認めた.FDG-PETではSUVmax2.0の淡い集積を認めた.術前画像からは,周囲縦隔脂肪への浸潤性はなく,非浸潤性の胸腺腫を疑っていた.胸骨正中切開にて前縦隔腫瘍摘出術を施行した.摘出腫瘍は灰白色充実性腫瘍で,組織学的に腫瘍細胞が分葉状集団や渦巻状配列をとって増生し,免疫組織化学的にEMA,claudin-1,vimentin陽性を示し,異所性髄膜腫と診断した.現在術後9ヵ月であるが,経過は良好である.縦隔発生の異所性髄膜腫は,海外文献でも数例の報告が見られるのみであり極めて稀な症例であるので今回報告する.