日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
大動脈弁狭窄症に合併した肺癌に対し一期的手術を施行した1例
金山 雅俊井上 政昭吉田 順一山下 慶之恩塚 龍士上野 安孝
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2016 年 30 巻 7 号 p. 845-850

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抄録

症例は79歳男性.糖尿病治療目的に紹介となったが,初診時の検査で右上葉肺癌(c-T2aN0M0 Stage IB)及び高度の大動脈弁狭窄症を指摘された.心機能は保たれていたが,弁膜症が高度なため肺癌手術における循環動態悪化のリスクが高く,弁膜症手術後の二期的手術では肺癌の進展が危惧されたため,一期的手術を選択した.手術は胸骨正中切開を行い,循環動態悪化時に迅速に人工心肺が装着できるように上行大動脈・右房に固定糸をおいた上で右上葉切除とリンパ節郭清を行った.その後に人工心肺下に大動脈弁置換術を行った.術後合併症なく,術後17日目に自宅退院となった.弁膜症合併肺癌に対し一期的手術を行うことにより安全な術後経過をたどれた症例を経験したので報告する.心弁膜症合併肺癌の一期的手術は,術前の評価を正確に行う事で安全に行える術式であると考える.

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