2016 年 30 巻 7 号 p. 856-860
症例は77歳,男性.検診で胸部異常陰影を指摘され紹介となった.胸部CTで左下葉S10に31 mm大の腫瘤影,左上葉S3に長径8 mm大の結節影を認め,経気管支的肺生検にて,術前に左S10から扁平上皮癌と診断された.手術では,高齢かつ低肺機能を考慮し,上葉病変に関して左S3部分切除を施行した.術中迅速病理診断の結果,肺腺癌であったため,多発肺癌と診断し,引き続き左下葉切除およびリンパ節郭清:ND2a-1を施行した.術後病理診断は左上葉が混合型小細胞癌で腫瘍は過半数を小細胞癌が占めており残りは高分化型腺癌であった.左下葉は大部分が扁平上皮癌で占められていたが,約5%に大細胞型神経内分泌癌(LCNEC)を認めた.多彩な病理組織像を呈した左上葉および左下葉肺癌の稀有な1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.