2017 年 31 巻 6 号 p. 753-757
症例は33歳女性.22歳時に左大腿滑膜肉腫に対し,広範囲切除および術後化学療法が施行された.術後3年目に肺転移で再発した.腫瘍は右肺下葉に存在し,右中間肺動脈幹内へ進展していたため,胸腔鏡補助下に右肺中下葉切除を施行した.肺切除術後8年目に右残存肺の肺門部に結節影が出現した.結節影は次第に増大し,右主肺動脈内にまで進展したことから肺転移を疑った.他の部位に転移を認めず手術の方針となった.手術は胸骨正中切開下に心囊内で右肺動静脈を切離し,同視野で右主気管支を切断した.その後,右残存肺と胸壁の癒着剥離を行い,右残存肺全摘除を施行した.癒着剥離時に,大循環経由と推察する血流により次第に肺が緊満し,さらに癒着剥離面からの大量出血を来したため,剥離操作に難渋した.本例のように心囊内で肺動静脈を切離可能であっても,胸壁との癒着が高度で剥離に難渋が予測される場合は,流出肺静脈処理を最後にすべきと考える.