日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
完全胸腔鏡下での左肺癌手術中に徐脈,心静止を来した1例
川名 伸一三竿 貴彦松原 慧吉川 武志青江 基
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2019 年 33 巻 2 号 p. 150-155

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抄録

肺切除術中の偶発症の一つとして,稀ではあるが迷走神経刺激による心停止が起こることがある.症例は69歳,女性.左上葉肺腺癌に対して完全胸腔鏡下にて左肺上葉切除および縦隔リンパ節郭清術を予定して手術を開始した.肺門前方での左主肺動脈の剥離操作中に突然高度の徐脈から心静止となった.直ちにツッペルと示指を用いて心臓を叩打したところ,心静止後約1分で自己心拍は再開した.迷走神経刺激が原因と考えアトロピンを投与して手術を続行した.大動脈弓下リンパ節郭清の際に再び高度徐脈となったが,操作の中断により徐脈は改善した.その後,徐脈誘発に注意しつつ郭清を完遂し手術を終了した.肺切除術中の迷走神経刺激による心停止例の誌上報告は,本症例を含めていずれも左側手術であった.肺切除術,特に左側手術においては徐脈の出現に注意を払い,心停止の前兆として捉えて機敏に対応することが,心停止への移行を回避するために重要である.

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