日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
術前3D-CTでAdamkiewicz動脈を確認し,術中に温存し得た後縦隔腫瘍の1例
樋口 光徳歌野 健一押部 郁朗添田 暢俊齋藤 拓朗鈴木 弘行
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2019 年 33 巻 6 号 p. 667-671

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抄録

症例は69歳男性.背部違和感を主訴に当院整形外科を受診.後縦隔腫瘍を認め当科に紹介となった.術前CTではTh8レベルに最大径25 mm大の腫瘤陰影を認めた.3D-CTでは第9肋間動脈からヘアピンカーブを描くAdamkiewicz動脈(AKA)が分岐していた.また腫瘍と接するように第8肋間動脈が走行しており,ここからもAKAを分岐している所見を確認した.手術は胸腔鏡補助下にアプローチした.縦隔胸膜を切開すると,第8肋間動脈を確認し得た.これを損傷しないように周囲から剥離した.交感神経が大動脈側に変位して縦走しており,同神経由来の腫瘍と考えられた.第8肋間動脈を温存しつつ腫瘍を完全に摘出できた.病理学的には神経鞘腫との診断であった.術後は対麻痺の症状もなく,術後第7病日に退院となった.後縦隔腫瘍でも下行大動脈に接する症例では術前にAKAを同定することは術後の対麻痺を予防するために重要である.

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