2020 年 34 巻 6 号 p. 578-581
胸腺腫は,心膜や肺などの近接臓器への直接浸潤がしばしば認められるが,気管支内腔を中枢に向かって進展することはまれである.今回我々は,胸腺腫術後11年で左上葉部分切除断端に再発を認め,気管支内腔進展を来したことから,左上葉管状切除を必要とした症例を経験した.59歳男性で,11年前に他院で胸腺腫type B3に対して胸腺・胸腺腫摘出術,左上葉部分切除術および横隔神経合併切除を施行された.咳嗽を主訴に近医を受診し左上葉の8 cm大の腫瘤を指摘され,原発性肺癌の疑いで当科紹介となった.左上葉気管支はポリープ状の腫瘍により閉塞し,気管支鏡生検では診断が付かず,診断と治療のために左上葉切除を行った.術中迅速病理検査で胸腺腫再発と診断され,上葉気管支断端が陽性であったことから管状切除を行い,換気後に肺動脈の屈曲を認めたために肺動脈形成を追加した.