2021 年 35 巻 2 号 p. 148-152
今回我々は膿胸を併発した化膿性胸鎖関節炎(Septic arthritis of sternoclavicular joint;SASCJ)の2手術例を経験したので報告する.症例1は基礎疾患として関節リウマチのある78歳女性.右SASCJが直接胸腔に波及して膿胸となったため,右鎖骨と胸骨柄の可及的搔爬+醸膿胸膜剥皮術と大胸筋弁による創閉鎖を施行した.起炎菌は結核菌であった.症例2は基礎疾患として糖尿病のある70歳女性.左胸壁穿孔性膿胸術後に左SASCJを発症したため,左鎖骨と胸骨柄の可及的搔爬+大胸筋弁による創閉鎖を施行した.起炎菌は膿胸と同じ黄色ブドウ球菌であった.膿胸とSASCJの合併はまれな病態であるが,早期診断と感染巣の範囲を考慮して外科的介入を含めた治療方針決定が重要であると考えられた.