日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
クロスボウの矢による穿通性肺損傷に対しVATS pulmonary tractotomyを行った1例
西川 仁士林 同輔
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2021 年 35 巻 4 号 p. 344-348

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抄録

穿通性胸部外傷に対しては,迅速に手術適応を判断し処置を行う必要がある.今回我々はクロスボウによる肺刺創に対して胸腔鏡補助下でpulmonary tractotomy(PT)を施行した症例を経験したので報告する.症例は50歳代男性.自分でクロスボウをセットし,左前胸部を撃った.その後意識を保ったまま胸痛,呼吸苦を自覚し,矢が刺さったまま当院へ救急搬送された.矢は左前胸部より刺入し左背部に貫通していた.胸部CTでは左中等度気胸と少量の胸水を認め,矢は左舌区と下葉S6を貫通していた.胸腔鏡で観察しながら矢の摘除と損傷部の修復を行う方針とした.S6の貫通部は自動縫合器を用いて部分切除した.舌区の貫通部は深く長かったため,自動縫合器を用いてPTを施行し修復した.術後経過は問題なく転院となった.胸腔鏡補助下で自動縫合器を使用したPTは,損傷部を迅速に処置でき手術時間の短縮にも有用であった.

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