日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
超高齢難治性胸水の患者に対する胸腔腹腔シャント挿入術の経験
森 浩貴能勢 直弘矢野 隆郎富田 雅樹中村 都英
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2021 年 35 巻 7 号 p. 795-801

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抄録

コントロール困難な難治性胸水に対しては胸腔穿刺や胸膜癒着術が選択されるが,PS不良例や高齢者では,穿刺に伴う合併症や癒着療法における有害事象が致命的になる可能性もあり,実臨床において施行困難なことも多い.

今回我々は90歳以上の難治性胸水患者にデンバーシャント(ミハマメディカル)を用いて胸腔腹腔シャントを造設し良好なコントロールを得た3例を経験した.2例については原因不明,1例については悪性胸水であった.全例全身麻酔下にシャント造設術を施行した.特に手術に関連した合併症発生はなく,その後も胸水による症状は外来にて良好にコントロールされている.

難治性胸水に対する胸腔腹腔シャント造設は,呼吸困難そのものや頻回の胸腔穿刺処置から患者を解放しQOLを改善させる緩和処置の選択肢として非常に有効であると思われる.またその家族をはじめとした介助者の労力軽減にもつながるため,患者と周辺の人の双方にとって十分にその恩恵が受けられるものと考える.

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