2021 年 35 巻 7 号 p. 819-824
結核菌による降下性壊死性縦隔炎は稀である.今回我々は,結核性咽後膿瘍から降下性壊死性縦隔炎を発症した1例を経験した.
症例は70歳台女性.多発筋炎に対して長期間のステロイド投与中に粟粒結核を発症し,治療目的に当院紹介となった.入院時に嚥下困難を認め,精査で咽後膿瘍と診断した.抗結核薬による治療を開始したが,1ヵ月の経過で下降性に縦隔炎に至り,頚部と縦隔のドレナージを施行した.頚部と縦隔の両方の膿から結核菌を検出し,結核菌による降下性壊死性縦隔炎と診断した.経過中に頚部から背部に至る膿瘍も形成し,追加のドレナージを要した.縦隔からの膿性排液は長期にわたり持続し,漿液性に正常化するまで術後53日間のドレナージを要した.
結核菌による降下性壊死性縦隔炎は,臨床所見に乏しく緩徐に進行する可能性があり,結核菌に特徴的な経過をたどると思われた.