日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
異常血管起始部で切離縫縮を行った肺底動脈大動脈起始症の1例
中村 速内田 孝宏田中 雄悟井上 武神保 直江眞庭 謙昌
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2021 年 35 巻 7 号 p. 831-835

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抄録

症例は67歳女性.発熱,咳嗽にて近医を受診した.胸部CTで下行大動脈から左底区域へ流入する直径20 mmの異常血管を認め肺底動脈大動脈起始症と診断された.手術は左第5,7肋間に操作孔を置き,第7,8肋間にポートを作成した.大動脈の縫縮は直視下と鏡視下を併用し,それ以外の胸腔内手技は鏡視下で行った.異常血管の径は大きく,切離部の瘤化を懸念し,異常血管起始部の下行大動脈壁をサイドクランプし異常血管を切離,下行大動脈壁にて縫縮した.異常血管処理後にICG蛍光法を用い,左下葉全域への血流低下が確認されたため左下葉切除を行った.病理組織診断では異常動脈壁の内膜の肥厚および中膜の菲薄化を認めた.また,中膜の弾性線維は途絶・消失しmyxoid changeも認められた.術後19ヵ月経過し大動脈壁の異常は認めていない.径の大きい異常血管は血管壁の組織脆弱性の可能性があり,その処理には十分な配慮が必要である.

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