日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
上大静脈および両側腕頭静脈閉塞を伴う胸腺癌に対して奇静脈を介した側副血行路を温存し切除した1例
千葉 慶宜大川 美穂馬渡 徹渡辺 敦
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2021 年 35 巻 7 号 p. 836-840

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抄録

進行期の胸腺由来腫瘍手術では,上大静脈や左腕頭静脈の合併切除および人工血管による血行再建を要することがあるが,血栓や解剖学的要因により人工血管の閉塞をきたす可能性がある.今回,上大静脈および左腕頭静脈閉塞をきたした胸腺癌に対し,側副血行路の温存に留意し切除した1例を報告する.症例は80歳女性.前縦隔腫瘍により,上大静脈および両側腕頭静脈の閉塞を認めたが,上半身や顔面の浮腫は無く,3D-CTで十分な側副血行路の発達を認めた.術中所見では奇静脈への浸潤は認めず,側副血行路の要となる同静脈の温存に注力し,血行再建を行わずに腫瘍を切除した.病理診断は胸腺癌で,術後のCTで奇静脈を含めた静脈還流は良好に保たれていた.奇静脈を介する側副血行路が発達している症例においては,同血行路の温存に留意すれば人工血管による血行再建を行わず,安全に腫瘍を切除し得ると考える.

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