2022 年 36 巻 4 号 p. 435-440
症例は60歳代,男性.突然発症の呼吸困難を主訴に当院を受診し,胸部X線にて右高度,左中等度の両側同時気胸と診断された.右胸腔のドレナージのみで両側肺の拡張を認め,9年前の胸腺カルチノイドに対する胸腔鏡下拡大胸腺摘出術の既往から胸腔間交通が疑われた.第8病日に胸腔鏡下両肺囊胞切除術および胸膜被覆術を施行し,同時に前縦隔に径4 cm大の両側胸腔間交通部を認めたため,ポリグリコール酸(PGA)シートおよびフィブリン糊による閉鎖を施行した.
胸腔間交通は稀な病態であるが,縦隔手術歴のある両側同時気胸の場合,その可能性を念頭に置き,呼吸状態が切迫していなければ片側の胸腔ドレナージで両側同時気胸の改善が見られるかの確認が有用と考えられる.また気胸再発予防目的に手術を検討すべきであり,囊胞切除や胸膜被覆術などに加え,胸腔間交通の閉鎖について考慮すべきと考えられるが,その方法や効果については今後の検討課題である.