2022 年 36 巻 7 号 p. 773-778
症例は72歳男性.2012年に多発肺癌に対し右肺上葉切除および右肺S9+10区域切除術を施行した.その後,遅発性肺瘻による胸腔内感染を繰り返した.2019年に有瘻性膿胸を発症したため開窓術を行い4ヵ月後に閉鎖した.2021年に血痰が出現し,有瘻性膿胸再燃と診断,再度開窓術を行った.開窓術後に右胸腔内に増大する腫瘤が出現し,肋骨融解像もみられたことから膿胸関連悪性腫瘍を疑った.開窓部から繰り返し生検を施行し,血管肉腫の診断を得た.血管肉腫は診断に難渋することが多いが,慢性膿胸治療後の胸腔に腫瘤が出現した場合は,悪性腫瘍を疑い精査することが重要と考えられた.また,生検の際には十分な組織量の採取が肝要と考えられた.