日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
Print ISSN : 0919-0945
ISSN-L : 0919-0945
症例
肺葉切除後1ヵ月以上経過して心囊内出血による心タンポナーデを発症した1例
沖 智成山下 貴司望月 孝裕
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 36 巻 7 号 p. 799-804

詳細
抄録

症例は58歳の男性で,Stage IA2の肺扁平上皮癌に対して左肺上葉切除を施行した.術後は順調に経過して退院となったが,術後41日目より右心不全症状が出現し,術後48日目に心タンポナーデの診断で緊急入院となった.心囊ドレナージで1400 mLの血性排液を認めたが,持続性の出血は見られず3日後にドレーンを抜去した.心大血管に異常はみられず,術中所見より心膜反転部を自動縫合器で噛み込んだことによる肺静脈断端からの心囊内出血と診断した.肺葉切除後の心タンポナーデは極めて稀であり,本機序が原因で術後1ヵ月以上経ってから発症した報告はない.心囊内操作を行っていない場合も発症する可能性があり,致死的となりうる重要な合併症であるため報告する.

著者関連情報
© 2022 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top