日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
胃癌周術期に低血糖症状が顕著となった孤立性線維性胸膜腫瘍の1例
杉浦 裕典安藤 紘史郎福山 馨北原 直人門田 嘉久
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2022 年 36 巻 7 号 p. 827-832

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抄録

孤立性線維性腫瘍は稀に低血糖を生じる.今回腫瘍発見後,胃癌の周術期に遅発性に低血糖を生じた症例を経験したので報告する.80歳男性.近医での胸部X線で左下肺野異常陰影を指摘され,気管支鏡下生検で孤立性線維性腫瘍と診断された.術前精査で進行胃癌が発見されたため先行して胃全摘術を施行された.胃癌術前より低血糖を認めていたが無症候性であった.術後にも低血糖を認めたが食事療法で対応されていた.退院後に意識障害で救急搬送,著明な低血糖を認めた.孤立性線維性胸膜腫瘍による腫瘍随伴症状としての低血糖と考え腫瘍切除術を施行したところ低血糖は改善した.術前の血清中に大分子量インスリン様成長因子II(Insulin-like growth factor II:IGF-II)の存在が示され,腫瘍随伴症状としての低血糖と診断した.孤立性線維性胸膜腫瘍による低血糖は経過中に増悪することがあり注意を要する.

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