日本呼吸器外科学会雑誌
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血管合併切除を施行した浸潤型胸腺腫の治療成績
向田 尊洋市場 晋吾青江 基岡部 和倫山下 素弘伊達 洋至安藤 陽夫清水 信義
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1997 年 11 巻 6 号 p. 717-723

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抄録

1963年から1995年までに当科において経験した胸腺腫128例 (被包型67例, 浸潤型61例) のうち, 血管合併切除を施行したのは20例であった.浸潤型症例と被包型症例を比較すると, 平均年齢に有意差はなかったが, 男性, 上皮細胞優位型が浸潤型に有意に多かった.浸潤型症例のうち血管合併切除例と血管非浸潤例で比較したが, 年齢, 性差, 病理組織型に有意差はなかった.血管合併切除例は血管形成例6例, 左腕頭静脈人工血管置換例7例, 上大静脈・左腕頭静脈人工血管置換例7例であった.使用した人工血管はTeflon グラフト2本, ePTFE (expanded polytetrafluoroethylene) グラフト6本, リング付きePTFEグラフト13本で, その開存は良好であった.III型症例に限れば, 血管浸潤例でも血行再建を含めた完全切除により非血管浸潤例の完全切除例と差異のない予後が期待できる.しかし治療成績の向上のためには, より効果的な術前術後の補助療法が必要だと思われた.

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