1997 年 11 巻 6 号 p. 745-748
縦隔リンパ管腫は, 縦隔腫瘍の中でもまれな疾患である.左大動脈弓下に発生した縦隔リンパ管腫の1例を経験した.
症例は57歳男姓, 咳嗽を主訴に当科受診, 胸部CT撮影にて, 左中縦隔に鉄アレイ状の腫瘤影を認め, 良性もしくは悪性縦隔腫瘍の疑いにて手術を施行した.腫瘍は, 前方に充実性の部分, 後方に嚢胞性の部分をもつ嚢状リンパ管腫であり, 容易に切除可能であった.
縦隔リンパ管腫の報告例はほとんどが単房性もしくは多房性の嚢状リンパ管腫であり, 自験例のように海綿状リンパ管腫の成分を含むものは, 本邦において自験例を含め8例にすぎない.治療法は, 外科的切除が一般的である.部分切除例には再発の報告があり, 可能な限り全摘除を心がけるべきと考えられる.