日本呼吸器外科学会雑誌
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胸腺嚢胞6例の検討
森田 琢也立花 秀一川上 万平折野 達彦中尾 圭一時津 浩輔橋本 隆彦佐々木 進次郎
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1998 年 12 巻 4 号 p. 499-505

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抄録
胸腺嚢胞は比較的まれな腫瘍とされていたが, 近年, 集団検診の普及や画像診断技術の進歩とともに報告例は増加している.今回我々は胸腺嚢胞の6切除例を経験し嚢胞内貯留液を中心に検討した.胸腺嚢胞は当教室における全縦隔腫瘍摘出例の5.2%, 先天性嚢胞の35%であり, 前胸部圧迫感の1例を除き無症状であり, 重症筋無力症等の合併はなかった.腫瘍は CT 上 water density を示し, MRIではT1で低信号, T2で液性成分に特徴的な高信号を呈した.ガリウムシンチは集積を認めず, タリウムシンチでは欠損像を呈した.確定診断と治療のため全例に手術を施行した.病理所見では悪性例はなく, 再発を認めず, 予後良好であった.嚢胞内容液成分の検討では, 腫瘍マーカーのCA125が高値を示し, 総蛋白0.1~2.0mg/dl, ナトリウム141~150meq/dl, LDH 3~20 U/l の範囲内であった.この結果より経皮的穿刺吸引は術前診断の手助けとなり, 画像上悪性所見に乏しい場合には内容液の吸引除去のみの治療洪本考々うる.
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