2023 年 33 巻 8 号 p. 602-611
1948年に実施された日本人の読み書き能力調査のデータを用いて非識字率と生年との関係を分析した.言語変化のS字カーブ説と見かけ上の時間の考え方を援用して,非識字率を目的変数,生年と居住地(市部/郡部)を説明変数とするロジスティック回帰分析をおこなった.その結果,非識字率と生年には逆S字カーブの関係が認められ,生年が遅くなる(年齢が若い,下限は15歳)ほど非識字率が低下することが明らかになった.その主要な原因として,義務教育無償化による学習機会向上の効果が時間経過とともに顕在化したことが考えられる.また,郡部の非識字率の逆S字カーブをグラフ横軸(生年)に沿って左方向に6年間分平行移動させると,市部の逆S字カーブに重なることも示した.