日本呼吸器外科学会雑誌
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肺腺癌術後10年目に発見された両側多発性異型腺腫様過形成の1例
虫明 寛行安藤 陽夫青江 基日野 眞人岡部 和倫山下 素弘伊達 洋至清水 信義
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1999 年 13 巻 2 号 p. 156-160

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抄録

症例は10年前にStage IAの中分化型肺腺癌にて右上葉切除術を施行した60歳の男性で, 胸部CTにて両側肺に径5~10mmの多発する腫瘤影を認めた.術前検査にて確定診断が得られなかったため, 約2ヵ月間の経過観察の後に腫瘤の一つを胸腔鏡下に切除し異型腺腫様過形成 (Atypical adenomatous hyperplasia, 以下AAHと略記) と診断した.その他の病変も画像上同様の所見を示しており, 両側肺に多発するAAHと診断し, 厳重に経過観察中である.一方, 肺腺癌とAAHの合併, 共存頻度が比較的多いことから病理組織学的に再検討を行ったが, 10年前の腺癌病変内にAAHの共存は認めなかった.また, 10年前の切除標本を全割して検討したところ, 腺癌と離れた部位に径5mmの孤立するAAHを認めた.今回発見された多数のAAHの病変も10年前から既に存在していた可能性が考えられ, また, 本例はAAHの経時的変化を知るうえでも非常に興味深いと思われる.

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