2001 年 15 巻 1 号 p. 47-53
症例は48歳, 男性.胸部異常陰影を主訴に当科へ紹介となる.右S2の胸壁浸潤肺腺癌+左副腎転移と診断され, 右上葉切除+胸壁合併切除+ND2aリンパ節郭清を施行した.術後病理病期はp-T3N0M1Stage IVで低分化腺癌であった.術前に7.6ng/mlと高値を呈した血清CEAは正常化したが術後2年目の腹部CTで左副腎の腫瘍がやや増大し, 内部に壊死性の変化を疑われ, さらにCEAの再上昇を来したため, 肺癌術後4年10ヵ月目に腹腔鏡下の左副腎摘出術を行い肺の原発巣からの転移と診断された.術後CEAは再び正常化した.同時性の副腎転移を伴った原発性肺癌の治療については確立された方針はみられないが, 本症例のように治癒に導ける可能性もあることより, 適応を慎重に検討すれば切除の意義があると思われた.