2001 年 15 巻 1 号 p. 41-46
症例は63歳男性.持続する咳嗽を契機に胸部単純X線で異常影を指摘され, 胸部CTで前縦隔腫瘍が疑われ紹介された.経皮生検で胸腺カルチノイドを疑い, 1999年9月腫瘍摘出術を行った.腫瘍は胸腺左葉を主座としてほぼ全体におよび, 左胸腔内へ突出, 少量の胸水を認めたが, 胸壁, 血管への浸潤はなかったため, 腫瘍摘出術を行った.H-E染色, 免疫組織染色でIgG, κ型の髄外性形質細胞腫と診断した.術後約10ヵ月の現在, 再発, 多発性骨髄腫への転化などは認めていない.形質細胞性腫瘍の中で, 髄外性形質細胞腫は大部分が上咽頭, 喉頭発生で, 縦隔発生は極めて稀である.なかでも本例のように胸腺発生と思われる報告は, 過去には見あたらなかった.