抄録
症例は16歳, 男性.咳嗽と顔面から頚部の腫脹を主訴に来院した.胸部X線写真, 胸部CT像で, 上大静脈および気管・気管支を圧排する前縦隔腫瘍を認め, 上大静脈症候群と気道狭窄を呈するoncologic emergencyと判断した.局所麻酔下に針生検を施行したが組織診断がえられなかったため, 全身麻酔下に開胸生検を施行し, セミノーマと診断された.術後気管内チューブの抜管ができず, 人工呼吸管理下に化学療法を施行した.組織診断の結果に基づいたcisplatinとetoposideによる化学療法が著効を示し, second look operationで切除された残存腫瘍にはviableな細胞は認められなかった.
上大静脈症候群と気道狭窄を合併しoncologic emergencyを呈した前縦隔腫瘍に対して, 全身麻酔下開胸生検は, 最適な化学療法を選択するために有効であった.