日本呼吸器外科学会雑誌
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肺癌細胞の転移能に対する肺切除術の影響についての実験的検討
吉増 達也尾浦 正二平井 一成粉川 庸三山本 修司岡村 吉隆
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キーワード: 肺癌, 転移, 増殖因子
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2004 年 18 巻 7 号 p. 774-777

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抄録

手術侵襲によりcytokineなど多数の血中生理活性物質の組成変化が生じることが知られている.肺癌肺切除術による血清の組成変化が, 総和として肺癌の転移能にどのような影響を与えるか, in vitroの実験系を用いて検討した.【対象】非小細胞肺癌 (NSCLC) 手術例16例で術前, 術直後に採血し血清を凍結保存した.【方法】各症例の術前後の血清を, ヒトNSCLC細胞EBC-1を用いたin vitroのassay系に加えて転移能の変化をMTTアッセイで評価した.【結果】術後の血清は術前血清の場合に比べ, 癌細胞障害活性の増強 (p=0.036), 血管内皮細胞への癌細胞の接着の抑制 (p=0.0002), 癌細胞の増殖促進 (p=0.003) がみられた.【まとめ】本実験結果は, 肺切除の手術侵襲による血清組成の変化が血中癌細胞の転移能を抑制する結果を示した.一方, 既に形成された転移巣の癌細胞に対しては増殖を促進する可能性が示された.

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