日本呼吸器外科学会雑誌
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18 巻, 7 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 吉増 達也, 尾浦 正二, 平井 一成, 粉川 庸三, 山本 修司, 岡村 吉隆
    2004 年 18 巻 7 号 p. 774-777
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    手術侵襲によりcytokineなど多数の血中生理活性物質の組成変化が生じることが知られている.肺癌肺切除術による血清の組成変化が, 総和として肺癌の転移能にどのような影響を与えるか, in vitroの実験系を用いて検討した.【対象】非小細胞肺癌 (NSCLC) 手術例16例で術前, 術直後に採血し血清を凍結保存した.【方法】各症例の術前後の血清を, ヒトNSCLC細胞EBC-1を用いたin vitroのassay系に加えて転移能の変化をMTTアッセイで評価した.【結果】術後の血清は術前血清の場合に比べ, 癌細胞障害活性の増強 (p=0.036), 血管内皮細胞への癌細胞の接着の抑制 (p=0.0002), 癌細胞の増殖促進 (p=0.003) がみられた.【まとめ】本実験結果は, 肺切除の手術侵襲による血清組成の変化が血中癌細胞の転移能を抑制する結果を示した.一方, 既に形成された転移巣の癌細胞に対しては増殖を促進する可能性が示された.
  • 濱上 寛子, 尾浦 正二, 平井 一成, 吉増 達也, 粉川 庸三, 佐々木 理恵, 山口 るつ子, 岡村 吉隆
    2004 年 18 巻 7 号 p. 778-781
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    57歳女性.1999年7月に左乳癌 (浸潤性乳管癌;乳頭腺管癌) に対し非定型的乳房切除術を施行された.2002年7月, 胸部CTにて右肺上葉に実質性変化を伴い一部にground glass opacityと思われる所見を呈する直径2cmの腫瘤影を認め, 画像所見から肺原発の腺癌の可能性を疑った.全身検索では他部位に転移なく, 気管支鏡下擦過細胞診にて疑陽性との結果であった.同年9月, 胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.組織診の結果から肺胞壁被覆型の転移形式 (lepidic metastasis) を示す乳癌肺転移と診断された.
  • 中村 昭博, 伊藤 重彦, 田村 和貴
    2004 年 18 巻 7 号 p. 782-787
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性.肺癌に対する右上葉切除術中に, double-lumentubeによる左主気管支損傷を認めた.縫合修復し術後経過は良好であった.分離換気は胸部外科において日常的な手技であるが, まれに重篤な合併症を惹起しうる.予防が大切であるが, 発生した場合には, 即座に対応しなければならない.このような合併症の発生を念頭において置くべきである.
  • 渡辺 健寛, 小池 輝元, 今給黎 尚幸, 広野 達彦
    2004 年 18 巻 7 号 p. 788-792
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    放射線治療の晩期合併症として, 放射線潰瘍が報告されている.今回, 胸壁に生じた骨壊死を伴う放射線潰瘍に対して, 広背筋皮弁と大胸筋弁による再建を施行した2症例を経験したので報告する.症例1は57歳女性.約35年前に絨毛癌の左肺転移に放射線治療が行われた.左背部の痛みと発熱で発症し当科紹介入院.左背部放射線潰瘍の診断で, 胸壁切除および広背筋皮弁による再建術を施行した.4年後に左前胸部腫瘤が出現し再入院.左前胸部放射線潰瘍の診断で, 胸壁切除および大胸筋弁による再建術を施行した.症例2は68歳女性.34年前に乳癌に対して右胸筋合併乳房切除術と術後照射が行われた.9年前に右前胸部放射線潰瘍の診断で胸壁切除および左大胸筋弁による再建術施行.今回, 再燃し当科紹介入院.デブリードマン後, 右広背筋皮弁による再建術を施行した.2症例とも術後の経過は良好で, 放射線潰瘍の再燃も無く, 外来にて経過観察中である.
  • 池田 宏国, 永廣 格, 戸田 大作, 安藤 陽夫, 清水 信義
    2004 年 18 巻 7 号 p. 793-796
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 肝前性門脈圧亢進症に伴う気管支静脈瘤の一例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は60歳男性, 繰り返す喀血と右肺巨大腫瘤の精査のため当科紹介となった.胸部X線・CT・MRIにて右胸腔に21×11cmの巨大な腫瘤を認め, 画像所見・臨床経過から慢性膿胸と診断した.胸腹部造影CT・MRIで胸部食道から胃噴門部にかけて著明に発達した側副血行を認め, また肝門部での門脈狭窄と肝外門脈の拡張も認めた.胃食道内視鏡では下部食道から胃噴門部にかけて全周性の食道静脈瘤を, 気管支内視鏡では気管下部から両側主気管支にかけて膜様部を中心とした非拍動情生・暗赤色・薄壁の血管拡張所見を認めた.以上の所見から, 肝門部門脈狭窄による肝前性門脈圧亢進症に伴った気管支静脈瘤と診断した.繰り返す喀血は静脈瘤からの出血と考えられた.
  • 神保 充孝, 金田 好和, 上田 和弘, 須藤 学拓, 濱野 公一
    2004 年 18 巻 7 号 p. 797-803
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡補助下手術が施行された縦隔発生のCastleman病の2例を経験したので報告する.症例1は21歳の女性.検診にて胸部X線写真上の異常陰影を指摘された.精査の後縦隔腫瘍と診断され, 胸腔鏡補助下手術を施行した.手術時間は2時間25分, 出血100mlで術後経過は良好であった.症例2は63歳の女性.天疱瘡の精査中に縦隔腫瘍を指摘され, 胸腔鏡補助下手術を施行した.手術時間は3時間15分, 出血155mlで術後経過は良好であった.2症例の病理組織診断はともにhyaline-vascular typeのCastleman病であった.自験例では慎重な剥離により胸腔鏡補助下手術が可能であったので報告する.
  • 内山 美佳, 福井 高幸, 宇佐美 範恭, 伊藤 正夫, 森 正一, 吉岡 洋, 今泉 宗久, 長坂 徹郎, 上田 裕一
    2004 年 18 巻 7 号 p. 804-809
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    乳癌は他の癌と比較して遠隔期に再発する傾向がある.また孤立性肺転移では術前診断で原発性肺癌の画像, 組織像に類似しているものがあり鑑別が困難である.今回我々はそのなかでも17年と13年という長期間を経て再発し, 鑑別に免疫組織学的診断が有用であった症例を経験したので報告する.症例1は52歳女性.17年前に右乳癌のため拡大乳房切除術が施行された.今回は外来通院中に左肺S1+2に直径25mmの腫瘍を認め, 同部の肺部分切除を行った.症例2は53歳女性.13年前に左乳癌のため胸筋合併乳房切除術が施行された.今回は検診で左肺S3肺門周囲に直径20mmの腫瘍を認めた.術前気管支鏡下肺生検により腺癌の診断を得たため, 左上葉切除+ND1郭清を施行した.免疫組織学的診断の結果は2症例とも肺腫瘍, 乳癌検体でGCDFP15 (アポクリン分泌腺マーカー) 陽性を示したため乳癌の肺転移と診断された.
  • 岡本 卓, 中野 淳, 三崎 伯幸, 後藤 正司, 桝屋 大輝, 中島 尊, 劉 大革, 亀山 耕太郎, 石川 真也, 山本 恭通, 黄 政 ...
    2004 年 18 巻 7 号 p. 810-815
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は44歳女性.乳癌の治療のため2年半胸腺脂肪腫の経過をみたが, 増大傾向はなく乳癌の経過も良好なため入院となった.胸部CTでは, 前縦隔に大きさ4.5×3.0cmの境界明瞭な腫瘤を認め, 内部のdensityは均一で-111HU, MRIではT1強調で高信号域, T2強調で高信号域を示した.胸骨縦切開で, 胸腺および胸腺脂肪腫摘出術を施行した.腫瘤は胸腺右葉下極に存在し, 5.5×3.0×4.5cm大で弾性軟で薄い被膜に覆われ, 割面は黄色充実性で均一であった.摘出した胸腺および胸腺脂肪腫総重量は60gであった.病理学的にはハッサル小体を有する胸腺内に, 薄い線維性被膜に被われた充実性腫瘤を認め, 腫瘤内では成熟した脂肪細胞の結節性増殖を認めた.約2年半胸部CTで変化を認めなかった胸腺脂肪腫につき文献的考察を加えて報告する.
  • 森川 洋匡, 平井 隆, 山中 晃
    2004 年 18 巻 7 号 p. 816-820
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    胸骨骨折は外傷性骨折の中では比較的まれである.当科では最近10年間で18症例の胸骨骨折を経験した.骨折の原因として交通事故が11例, 転落が3例, その他4例だった.合併損傷としては肋骨骨折が6例, 血気胸が5例, 鎖骨骨折が1例, 胸椎骨折が1例, 腰椎骨盤骨折が1例であった.そのうち12症例には保存的治療を行い, 6症例に対して観血的胸骨固定術を施行した.固定方法は (I) ワイヤ3本,(II) ワイヤとバンド,(III) ワイヤ2本,(IV) ワイヤ2本と吸収性胸骨ピンの4通りで行った.術後4症例では再転位はみられなかったが, 2症例では再転位がみられた.手術で十分な固定ができなかったことに加えて, 術後局所安静が維持できなかったことも原因と考えられた.観血的胸骨固定術の適応としては (1) 骨折による転位が大きく疼痛が強い場合,(2) 骨折により他臓器が損傷されている場合が考えられた.
  • 張 性洙, 奥村 典仁, 三好 健太郎, 松岡 智章, 亀山 耕太郎, 中川 達雄
    2004 年 18 巻 7 号 p. 821-825
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    縦隔悪性リンパ腫は通常均一な内容の腫瘍であり, 嚢胞状陰影呈することは稀である.今回我々は, 嚢胞状陰影を呈し術前診断が困難であった縦隔腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は59歳男性.検診にて胸部レントゲン異常を指摘された.胸部CT検査では左前縦隔に壁の厚い嚢胞状陰影と, 上縦隔に2個の結節性陰影を認めた.入院時の胸部MRI検査では, 前縦隔の嚢胞状陰影は縮小し上縦隔の2個の結節影は共に増大していた.胸腺関連腫瘍とリンパ節腫大を疑い腫瘍摘出術を施行した.病理組織診断では共にdiffuse large B cell lymphomaと診断された.嚢胞性病変は腫瘍内の広範な壊死に起因したものと判明した.術後化学療法および放射線療法を施行し, 術後1年10ヵ月の現在, 再発を認めず経過は良好である.嚢胞状陰影を示す縦隔悪性リンパ腫はまれであり症例を提示した.
  • 岡本 卓, 三崎 伯幸, 後藤 正司, 桝屋 大輝, 中島 尊, 劉 大革, 亀山 耕太郎, 石川 真也, 山本 恭通, 黄 政龍, 横見瀬 ...
    2004 年 18 巻 7 号 p. 826-830
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は66歳女性.気管支喘息の経過中に胸部X線像上, 右下肺野に結節影を指摘され当院を紹介された.胸部CTで右中葉S4からS5にかけて周囲に淡い浸潤影および胸膜嵌入像を伴う境界明瞭な10×8mm大の結節影を認めた.1ヵ月の経過で陰影の縮小傾向はなく悪性腫瘍も否定できなかったため, 胸腔鏡下に肺生検を施行した.胸腔鏡では, 胸膜嵌入を伴う暗赤色の小結節として認めた.術中迅速病理検査では, 中等度のリンパ球浸潤と血管壁の肥厚を指摘され炎症後の瘢痕様の病変が疑われた.切除肺の病理組織検査では, 肺胞壁と血管壁の著明な肥厚, 血管の拡張, 肺胞内出血を認め陳旧性出血性肺梗塞と診断された.気管支喘息を除き基礎疾患の関与が否定的な女性に発症し, 小結節影を呈した陳旧性出血性肺梗塞の一切除例を報告した.
  • 安彦 智博, 二俣 健, 堀口 速史, 田島 敦志, 加藤 良一
    2004 年 18 巻 7 号 p. 831-834
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    胸腔内脂肪肉腫の一切除例を経験したので報告する.患者は30歳産褥婦.妊娠7ヵ月目頃より高度な咳噺, 胸痛, 呼吸苦が出現.出産後胸部X線およびCT検査で左胸腔内をほぼ占拠する腫瘤影を認めた.吸引細胞診, 針生検で脂肪肉腫と診断.腫瘍摘出術およびCDDP (1mg/kg), ADM (1mg/kg) を用いた胸腔内温熱灌流療法を施行した.切除標本の病理組織検査で胸腔内原発の多形型脂肪肉腫と診断した.術後胸腔内再発に対して放射線照射を施行したが, 急速に増大する局所再発により, 術後5ヵ月で腫瘍死した.胸腔内脂肪肉腫は検索し得た限り, 13例の英文報告例があるのみで稀な疾患と考えられた.
  • 上林 孝豊, 大野 暢宏, 寺田 泰二
    2004 年 18 巻 7 号 p. 835-839
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    嚢胞性病変を含む前中縦隔の良性腫瘍の切除方法は, 開胸術か肋間からのアプローチによる胸腔鏡下手術で行われることが一般的である.今回我々は, 剣状突起下アプローチにて胸骨吊り上げを行い, フレキシブルスコープを用いて胸腺嚢胞を摘出したので報告する.症例は80歳男性.乾性咳噺を主訴に当科を受診.胸部造影CT, 胸部MRIて前縦隔左側に44×42×38mm大の薄壁単胞性の嚢胞性病変を認めた.胸腺嚢胞を疑い, 剣状突起下アプローチによる胸骨吊り上げ胸腔鏡下手術により嚢腫を摘出した.病理組織学的に胸腺嚢胞の診断を得た.前中縦隔の嚢腫性病変の摘出に対して本アプロ-チは有用であると考える.
  • 大畠 雅之, 永安 武
    2004 年 18 巻 7 号 p. 840-844
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は3ヵ月男児.在胎22週の胎児超音波検査で左胸腔内に多嚢胞性病変を指摘された.先天性嚢胞性腺腫様奇形腫の診断で在胎38週5日, 2340gで出生.出生後のCTにて左胸腔内に嚢胞と充実成分の混在する病変を認め, 当科紹介となった.患児の呼吸状態は安定しており一旦退院したが, 生後3ヵ月に嚢胞の増大を認め左下葉切除術を施行した.左下葉には嚢胞成分が存在し, 横隔膜靭帯には胸部大動脈から流入する太い血管を認めた.病理組織検査で内腔径5~6mmの太い動脈が流入する充実性病変に接して嚢胞状に拡張した病変が存在していた.嚢胞部分には径4~5mmの多列線毛上皮で裏打ちされた嚢胞が密集し, 気管支は正常と異なり分布が不均一で異常に拡張しておりStocker type IIのCCAMの組織像を示していた.以上より本症例はCCAM病変を合併する肺葉内肺分画症と診断された.術後経過は良好でその後再発・再燃を認めていない.
  • 森川 洋匡, 平井 隆, 高橋 鮎子, 山中 晃
    2004 年 18 巻 7 号 p. 845-849
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    先天性嚢胞性腺腫様奇形 (以下CCAM) の2手術例を経験した.
    症例1: 5歳の女児.主訴は発熱, 咳噺.胸部X線上右下肺野に鏡面像を伴った複数の嚢胞がみられた.胸部CTでは右下葉に一部鏡面像を伴った多房性嚢胞陰影を認めた.同部位の部分切除術と肺縫縮術を施行した.病理ではCCAM, Stocker分類1型と診断された.術後, 発熱・咳嗽が再び認められ, 遺残嚢胞の拡大による術後再発が確認された.右肺下葉切除を施行し, 以降再発はみられていない.症例2: 8歳の男児.2歳の時に肺炎の既往がある.主訴は発熱.胸部X線上右上肺野に縦隔に接するように腫瘤影を認めた.胸部CTでは右主気管支上縁から縦隔に揺するように肺尖に達する2房性の嚢胞を認めた.右肺上葉切除術を施行し, CCAM Stocker分類1型と診断された.術後再発はみられていない.
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