日本呼吸器外科学会雑誌
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転移性肺腫瘍に対する両側開胸の検討
加勢田 静西村 嘉裕酒井 忠昭池田 高明
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1992 年 6 巻 6 号 p. 634-640

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抄録

29例の転移性肺腫瘍に対し, 両側開胸による転移巣の切除を行った.初期の11例では, 異時的に後側方開胸を行ったが, 呼吸不全に陥ったり, 在院期間が長くなる症例が多かった.また, 35ヵ月以内に全例死亡し, 治療成績も不良であった.そこで, 後期の18例では, 両側同時開胸を行った.うち7例では, 葉切除を行ったが, 切除範囲が大きかったにもかかわらず, 術後, 重篤な呼吸器合併症は起こらなかった.また, 18例中10例が, 5~73ヵ月生存中であり, 一側のみ開胸した転移性肺腫瘍症例の成績と比べ, 遜色がなかった.18例のアプローチは, 胸骨正中切開が1例で, 残りの17例は後側方開胸を行った.胸骨正中切開は, 手術時間や呼吸機能の面では利点があるが, 背側の病変の処理が困難で, 転移巣が遺残する危険性がある.一方, 両側後側方開胸は, 術後の癖痛や, 呼吸機能障害の問題があるが, 硬膜外麻酔で十分な除痛を図ることにより, これらの難点を克服することができた.

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