1992 年 6 巻 6 号 p. 647-654
広背筋温存開胸法を原発性肺癌手術症例に実施しその有用性について検討した.対象は1988年9月から1989年7月までの原発性肺癌手術症例53例で, 無選択的に広背筋を温存し開胸を行った31例 (温存群) と広背筋を切断し標準開胸を行った22例 (切断群) に分け, 両群の比較検討を行った.開胸創は2つの開胸器により上縦隔のリンパ節郭清に十分な大きさとなった.肺機能は術後において両群間に差は認められず, 本法の利点は術後鎮痛剤の使用量の軽減に留まった.温存群では皮下ドレーン抜去後に浸出液の再貯留 (seroma) が4例 (12.9%) に生じたがいずれも間欠的穿刺吸引で治癒した.本開胸法は術後疹痛の軽減, 切開創の外観などに有利であるが原発性肺癌手術の標準開胸法の1つになり得るという積極的な緒論には到らなかった.