1992 年 6 巻 6 号 p. 699-705
症例は53歳の男性.1967年, 33歳時に左上肺野に異常陰影を指摘され, 1968年に左肺上葉切除術を受け, 細気管支肺胞型腺癌と診断された.18年後の1986年には左下葉に非定型抗酸菌症を併発し, 内科的治療では軽快せず荒蕪肺に陥り, 肺全摘術を受けた.その後経過観察中であったが初回肺癌手術から20年目の1988年10月に胸部X線で右下肺野に円形陰影が発見された.確定診断は得られなかったが, 肺癌を疑い1989年1月右開胸術を行った.その結果, 細気管支肺胞型腺癌と診断し, 肺機能温存を考慮し右S10区域切除術を行った.術後肺水腫をきたし, 一時補助呼吸を要した.第2癌術後3年の現在再発はみられていない.
今後さらに異時性肺多発癌が増加してくると思われるが, 肺全摘術後の低肺機能であっても, 術前後の慎重な管理により縮小手術が可能であり, 予後の改善が期待できると考える.