1992 年 6 巻 6 号 p. 712-718
化学療法を先行させて治療を行った浸潤型胸腺腫3例を報告した.症例1 : 31歳, 女性.多角形胸腺腫疑い.CDDP・CPA・VCRによる化学療法と放射線照射の併用療法で著効を得た.症例2 : 64歳, 男性.混合形胸腺腫CDDP・VP-16による化学療法で奏効し, 放射線照射30Gyを行った後, 心膜・左腕頭静脈・左肺の一部を合併切除し腫瘍を摘出.摘出病理標本では広い範囲に線維化がみられ, 術前治療の効果が認められた.術後, 浸潤部周囲へ30Gyの照射を追加した.症例3 : 65歳, 男性.紡錘形胸腺腫.CDDP・VP-16による化学療法を行うも不変で, 左右腕頭静脈・上大静脈・心膜・右肺一部を合併切除し腫瘍を摘出.人工血管による血行再建を行った.摘出病理標本では一部に線維化を認めるのみであった.術後に浸潤部周囲へ40Gyの放射線照射を行った.
浸潤型胸腺腫に対し, 化学療法を治療の第一選択として試みてみる価値はあると思われた.