抄録
患者は59歳の男性.胸骨柄に発生した軟骨肉腫のため, 昭和51年に胸骨柄部分切除術をうけた.1984年には, 右胸鎖関節部に再発し, 胸骨上半切除術とレジン板による胸骨再健術をうけた.さらに, 1989年には左胸鎖関節部への再々発のため, 胸骨全摘術とレジン板による胸骨全置換が行われた.この際, レジン板がやや大きめに作製され, また肋骨との固定が不十分であったが, 術後早期には胸壁の固定はよく保たれていた.3年後の1992年, タンスを抱え上げた直後に胸痛とともに喀血をきたした.レジン板は左胸腔内に逸脱し, レジン板を肋骨に固定していた接合ピンが左上葉を損傷していた.当該接合ピンの除去と肺部分切除術を行い症状は消失した.レジン板は逸脱した位置で比較的固定が保たれていたのでそのまま放置した.補綴物の材料, 形態, 大きさおよびその固定に問題が示唆された.