1993 年 7 巻 7 号 p. 822-826
症例は67歳の女性, 健診で左下肺野に8mm大の境界明瞭な小円形陰影を指摘された.気管支鏡下の肺生検や擦過細胞診では確定診断がつかず, 良性腫瘍の疑いで腫瘍摘出術を施行した.病理組織診断は肺原発の血管外皮細胞腫であった.以後外来で経過を観察していたが, 術後1年7ヵ月目に左肺門部に肺転移を認め, 肺部分切除術を施行した.再切除後1年2ヵ月を経過したが, 再発の兆候はない.本症例は病理所見で悪性像はみられなかったが, 原発巣と転移巣のDNAパターン, 増殖細胞核抗原を比較し, 悪性度の指標になり得る可能性が示唆された.