1993 年 7 巻 7 号 p. 816-821
原発性肺癌で左肺全摘後心臓脱を生じた症例を経験した.症例は67歳女性で心嚢内肺動脈処理を行い左肺全摘術を施行した.48時間後血圧低下, 頻脈, チアノーゼを認め, 胸部写真・CTにて左胸腔内に心陰影の突出を認めた.緊急手術で脱出心の還納, 心膜補填を行った.本邦報告は10例で9例が肺癌による肺全摘術後, 1例が気管・気管支形成の心膜利用例である.発症は全例2日以内で, 24時間以内が8例である.修復は人工硬膜4例, ゴアテックス2例, 胸膜1例, ダクロソやテフロン材2例, 縫合閉鎖1例で全例治癒している.本症は予防が第一で, 心膜切除・切開時は確実な修復を行い, パッチによる修復は異物反応が少ない材質が好まれる.